複業できる人がたくさんいる地域は面白い

Uターンで故郷に戻り、それまではやったことのなかった農業を始めた梅地さんに阿武町での農業がどんなものかお聞きしました。

 本業は子どもたちのサッカークラブのコーチ。農業は副業ですというと梅地さんは言うが、話を聞いてみると出来る事や興味がある事に本気で取り組む複業人だった。確かに、人が少ない田舎では一人が複数の得意技を持っているとその地域で出来る事が増えるだろうし、逆にその人からみると、自分が活躍できるステージが多いとも言える。

こんな田舎でもやりたいことができる。夢を叶えられることを伝えたい

  隣接する市の女子高生が地元の人へ地域の魅力を伝えたいと、おいしい野菜でサラダボウルを作って販売するイベントを企画した際にも背中を押し実現することを支援した。その子は、Facebookにやりたいと思いながらも「どうせ私がやっても」、「まだ高校生だし」と勇気が持てなかったけど、信頼できる周りの大人たちに背中を押してもらって挑戦することの大切さを学んだと、感想を書いている。結果は、用意した120食のサラダボウルは1時間で完売したそうだ。

年間で200品目。変わったものばかり作っています

これ何かわかりますか?と、その野菜を畑から採って口にさせてもらったが何かはわからなかった。聞くと、それはカリーノケールといい、苦いものだと思っていたが印象が全く変わった。青臭さやえぐみがなくとてもフレッシュな感じを受けた。サラダ用に生食もできる品種で、ここ最近では大手の牛丼チェーンがケールレタス牛丼を商品化したりファミレスのサラダバーにしようされるなどその需要は高まっている。
その他にも枝分かれするブロッコリーやビーツ数種類、ジャガイモも見た目がサツマイモのようなタワラヨーデルなど5〜6品種、黒いキャベツの言われるカーボロネロなど、元々この地域であまり栽培されていなかった野菜がほとんどだ。

この辺りは温暖な気候で土地も肥沃だから、大抵のものは育ちますよ

 見せていただいた畑は、海沿いの棚田で昔は稲作が盛んだったそうだが、梅地さんが戻ってきたときには20年くらい使われていない耕作放棄地になっていた。阿武町は全域が萩ジオパークび構成地域で、ダイナミックな地殻活動により起伏に富んだ地形をしている。この山間の棚田にも周辺の山の滋養が流れ込んでいるだろうし、海に近くミネラル成分も豊富だとしたら奈古の中でも特に肥沃な土地なのかもしれない。

自然環境に合わせて人々が発展させてきた一次産業が、一時期は衰えたかもしれないが今こうして若い担い手に受け継がれ新たな発展を見せはじめていると思うと、田舎では自然環境と人の力が魅力を作る原動力になっているのだろう。

奈古は、農業が盛んなところじゃない。でも、逆にそれが良かった

 実家が農家だったとはいえ、「梅さんの農園」として起業した梅地さんのスタイルは既存の農業にとらわれずに独特だ。周りは昔ながらの慣行農業が多い中、無農薬で栽培し200品目も作り、それも珍しい品種に絞っている。出来るだけ除草もせずに農作業をするのも午前中だけ。午後は、サッカークラブのコーチとしてグランドへ出る。農作業をやってるというよりは毎日アウトドアを楽しんでる感じと言うし、「梅さんの農園」のロゴマークを作ってキャップなどのグッズも作っている。

もし奈古が、何かの産地だったら農業の正解が決まっていたかもしれない

 産地で農業が大規模化している地域だと、すでにノウハウがあり、品種、栽培方法、出荷規格、出荷先など全てが最適化されてしてそれが正解となってしまう。ノウハウがありやり方を教えてもらえるのは新規就農者にとってはありがたいことだとは思うが、全体の効率性を高めはするがそれでは多様性は失われてしまう。梅地さんにとっては、自分で考えて試してみて自分のスタイルを作り上げられる奈古での農業が合っていたのだろう。

自分には農業の師匠はいません。情報はネットで調べています

 お手本となるような農業の師匠がいるのか聞いてみると、そのような答えが返ってきた。それは人と変わったことをやりたいということではなく、一時期、サッカーでプロを目指して努力して来た梅地さんにとっては、自分の力で前に進むという生き方が身についていて、野菜の売り方や需要、価値などを考えた結果、周辺農家との差別化を図るためのスタイルを作り上げていくということは当然のことなのかもしれない。

ウチの野菜は対面販売で説明した方が売りやすいから、地元でマルシェをやりたい

 実は、就農してまだ3年目。なのに、栽培している野菜についてはすごく詳しい。それは情報が持つ人を納得させるという価値を大切にしているから、とにかく調べる。山口県は野菜の摂取量が少ないらしい。県民に、野菜を知ってもらうには何か興味を持つためのきっかけが必要になる。梅地さんは、それを「へぇ~そなんだ~」っていう発見があると人は興味を持つでしょ!だからそれを伝えたいんだと言う。

周辺では、萩市のマルシェが有名だが、いずれ阿武町の道の駅でも地域の元気な生産者たちの農産品や海の幸が並び、活気溢れるマルシェが開催されるかもしれないことを考えるととても楽しみだ。

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